好文木(校長ブログ)
2025.08.27
平和を祈って味わうティー

 2学期始業式で先日の好文木で紹介した辻田真佐憲著の『「あの戦争」は何だったのか』に触れつつ歴史探究についての話をしました。
 太平洋戦争の敗戦から80年となり、戦争を実体験した人が少なくなってきました。一方で世界の情勢は混沌とし、戦争や紛争が止みません。これからも私たちは平和を享受したいと思いますが、そのためには歴史に学び「あの戦争」は何だったのかを考え続けることが大事だということを生徒たちに伝えました。
 残念ながら、歴史は暗記科目で面白くないと思っている生徒が一定数はいます。歴史を面白くなくしているのは教科書だと思います。例えば日本史の教科書では1冊に古代から現代までびっしりと出来事が書き込まれています。本来、歴史とは人が主役でそこには物語があるのですが、教科書に物語性はなく、人々の思いや気持ちもほとんど描かれていません。そこで、教科書を読んで興味の湧く時代や出来事があれば、それに焦点を当てた書物を読むことで、歴史の面白さ、意義に気づいてほしいとも話しました。
 本校には今、ウクライナから避難して来た生徒がいます。この夏休み、里帰りをしたと聞いていたので、無事に戻ってこれるか心配しておりましたが、話をしているアリーナのステージの上から栗毛色の頭が見えたのでホッとしました。だからでしょうか、「今も空爆にさらされている多くの人々がいることに思いをはせるとき、平和な日常を送れるわれわれの幸せを感じずにはおられない」と、いつもより少し話に力が入ってしまいました。
 夕方、帰り際の彼女に廊下で会ったので「お父さんとお兄さんは元気でしたか」と訊ねると、「兄には会えませんでしたが、父は元気です。大丈夫です。」と健気にも明るく答えてくれました。「早くウクライナに平和が戻ればいいね」と言うと、「ええ、でもなかなか」と首を横に振りました。「そうだね」と私も頷かざるを得ませんでした。
 翌朝、いつものように玄関で登校する生徒に挨拶をしていると彼女がやってきて「これ、ウクライナのお土産です」と言って奇麗な紙袋を差し出しました。ウクライナのお茶のセットが入っていました。「わざわざありがとう。有難く頂きます」と言って受け取りました。時々、大会や遠征に行った部活動の生徒からお土産をもらうことがあるのですが、今回は戦地からわざわざ買って来てくれたお土産だけに熱いものがこみ上げました。お昼の時間、そのHERBAL TEAをいただきました。夏の木漏れ日の下、美しいキーウの街角で彼女が以前のように家族とともに穏やかなアフタヌーンティーを楽しめる日が早く戻ってくることを祈らずにはおられません。

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