日本経済新聞が三日間にわたり「忘れられたパンデミック」と題し、スペイン・インフルエンザの特集を組んでいます。スペイン・インフルエンザは、今から100年前の大正時代、第一次世界大戦期に流行し、日本ではスペイン風邪と呼ばれました。
世界人口の3分の1から半数が感染し死者は最大で1億人に達し、日本でも39万ー45万人が亡くなったと言われています。
私も名前は聞いていましたが、これ程の甚大な被害があったとは正直認識できていませんでした。記事によれば、当時は第一次世界大戦が起こり、またその後、関東大震災が起きたため、このパンデミックの記憶が片隅に追いやられたのではないかという歴史人口学者の意見を紹介しています。
私は今、「ロビンソン・クルーソー」の作者であるダニエル・デフォーが著した「ペスト」を読んでいます。1664年、ロンドンを襲ったペストの惨禍をリアリティー溢れる事例を駆使して描いています。私にはカミュの「ペスト」より印象に残る作品です。 ロンドンでは毎日1000人が亡くなるというインフルエンザ等に比べると極めて致死率の高い疫病ですが、感染者が自暴自棄になり他人に移そうとしたり、食料を買い溜めたり、ロンドンから郊外に逃げ出し感染を広げたりするなど、現代にも通じるエピソードがふんだんに盛り込まれています。
ペストは14世紀にも大流行しましたし、この物語の前年1663年にはオランダで猛威を振るったようです。スペイン・インフルエンザも第三波まであり終息まで2年を要しました。
スペイン・インフルエンザはワクチンも特効薬もなく、多くの人が一定の免疫を獲得したため終息に向かったと言われています。今回の新型コロナウイルスについては、ワクチンの開発も進められていると聞いていますが、実用には18ヶ月ほどかかるとの説もあり、やはり長期戦になることは間違いなさそうです。
この時期、疫病の歴史を紐解き、過去に学び、今の生活に活かすことも大切ではないかと思います。