先週末に入学試験が終わり、いよいよ3月2日の卒業式に向けて秒読みに入りました。入学した生徒が全員そのまま卒業してくれればいうことはないのですが、残念ながら、3年間のうちに転退学者が出ます。最近は生徒指導上の問題での転退学はなく、メンタルな原因がほとんどです。「気の持ちよう」と言えばそれまでなのですが、これがなかなか一筋縄ではいきません。気持ちを切り替えて頑張れる人とそうでない人の差は何なのか。それは一歩踏み出す勇気だと思います。その勇気の源は「こうなりたい」という希望であり、目標です。これがないと頑張れません。この希望や目標を一緒になって見つけてやるのが我々の仕事です。生徒に最も近いのは担任です。それ以外では学年の先生や部活の顧問です。通常、校長は生徒から最も遠い存在ですが、私の場合は違います。困っている生徒や挫けそうな生徒を見つけると放っておけない性分です。
1年生の時の遅刻指導の朝、玄関で私の横に並んで挨拶をしたことがきっかけで話をするようになった生徒がいます。明るい子なので、中学校は不登校と聞いて驚きました。卒業どころか進級も無理かと本人は思っているようでした。クラスの友達とのコミュニケーションも面倒で、やる気が起きず欠席や遅刻ばかりしていました。
朝はいつも8時26分ごろに登校します。これはほぼ最後に近い時間です。私から声をかけるうちに、来ると2~3分、私と話をして教室に行くのが日課になりました。時間に現れないと「今日は休みかな」と気になり担任に確認します。最初のころは休みが多かったのですが、「遅刻でもいいからおいで」というと、そのうち遅刻してでも来るようになりました。朝見かけないと、担任に「今日も遅刻かな?」、「ええそうです」という会話が常になりました。こうして2年生になると少し前向きになりました。
本人は高校も続かないだろうと思っていたようでしたが、ついに3年生になれました。そのことを褒めて、ここまで来たからには進学先を決めようと話をし、決まるとさらに前向きになりました。夏休みには志望動機や自己PR文の作成や面接でのプレゼンテーションの練習を手伝いました。そして無事、大学に合格できました。本人にとっては入学時には予想だにしなかった嬉しい結果になりました。これはひとえに明るく元気な担任が良く面倒を見てくれたお陰だと思います。また、仲の良いクラスメイトができたことも大きかったと思います。ご両親も協力してくださいました。私も微力ながら力になれて本当に嬉しく思います。と同時に「4月からもう君はいないのか」とちょっぴり寂しくもあります。
この時期は毎年同じような思いをします。廊下を歩いていると「校長先生」と声がして振り返ると、ワープロ検定の勉強に来ている3年生3人がバレンタインのお菓子を持ってきてくれました。明るく元気なこの子たちとももうすぐお別れです。
今週はぐっと気温が上がるとか、春の訪れが早そうです。再来週は卒業式です。