好文木(校長ブログ)
2023.07.01
高校授業料完全無償化、深まらぬ議論

 昨日の関西テレビのnewsランナーにて、吉村大阪府知事と私学2校の校長との「高校授業料完全無償化」に関しての意見交換の様子が放映されました。私学団体は以前より知事との面談を申し込んでおり、とりあえずそれが実現した形でしたが、残念ながら、双方とも従来の見解を述べるにとどまり議論は深まらず平行線だったと思います。
 論点をまとめると以下のようになります。私学側は60万円のキャップ制で所得にかかわらず超過分は全て学校負担というのは、教育の質の低下を招き受け入れられない。知事は生徒の選択肢を広げるためにキャップ制は必要との見解。60万以下の授業料の学校も半数以上ある。教育の質の低下は望んでいない。私学の収入確保には寄付など別の仕組みを積極的に考えるべき。
 知事の案における60万円キャップ制は統制価格を私学経営に持ち込むことになります。これの妥当性です。私学なのだから60万を超える部分は所得により学校負担と保護者負担になる現状でよいのではないか、なぜ一律にしないといけないかについて、知事の説明は「行きたい私学に行ける教育の平等性」に終始されていましたが、説得力に欠けます。また、一般からの寄付についても現実味の薄い急ごしらえの案のように思います。
 一方、授業料を固定されると教育の質が下がるという私学側の意見には、授業料が高い学校の教育の質は低い学校より高いという発想が垣間見られます。教育の質とは何なのかということであります。大学進学実績なのか、部活動の実績なのか。生徒がみな難関大学を望んでいるわけでもなければ、部活動に賭けているわけでもありません。そういった大多数の生徒を自立に導くことが教育の大事なところだと思います。
 知事が60万円のキャップ制に拘られるのは、就学支援金と経常費補助金を合わせると収入の相当額を占める私学(学校によれば60~70%)におけるお金の使い方について疑義をお持ちなのではないかと感じます。少子化が進む中、生徒募集は熾烈を極めています。その結果、設備やサービスの競争が激化しています。学校にそこまで必要なのか。税金が投入されていないのなら、私学側と保護者が納得していればどのように授業料を設定しても、どれだけ豪華な設備やサービスを提供しても文句を言われる筋合いではないと言えますが、実態はそうではないので、ここは我々も真摯に考えねばならないところでしょう。
 今回の高校授業料完全無償化案は日本の私学の位置づけを問う問題です。知事の所属されている政党は自由市場での競争原理を尊ぶ新自由主義的な考え方だと思います。その中にあって今回の案は極めて社会主義的に思えます。これは私学の捉え方が税金投入を進めた結果、変わったということなのでしょうか。私立とは私が創った学校だが、もはや半官半民だと。私学に対する共通認識がないところに議論が平行線をたどる原因があると考えます

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