好文木(校長ブログ)
2023.05.19
高校授業料完全無償化

 大阪府の吉村知事は選挙公約を実現すべく、大阪府民の高校授業料の完全無償化に向けた素案を発表しました。各紙では「高校完全無償化」という見出しをつけていますので、かかる費用すべてがタダになると誤解を招きますが、入学金や施設設備費、諸経費、制服代等々はその限りではありません。あくまで授業料のみが無償化になります。来年度の3年生から適用され、2026年度には全学年が対象となります。所得制限を外した形での完全無償化は全国初です。大阪府民であれば、公立も私立も所得にかかわらず全ての生徒の授業料が無償となります。そのうえ、近畿圏の私学に通う生徒も対象とする方針です。
 私立高校ではこの無償化の適用を受けるためには、府が決めた標準授業料(現行60万円)以上の学費は学校が負担するという「キャップ制」を受け入れることが条件となります。現在は標準授業料を超える金額は保護者負担となっていますので、これを学校負担とするというのは、適正な授業料は60万円だと府が表明するに等しく、実質的に授業料の統制になると思います。
 私学に通う生徒には現在も所得に応じた国と地方自治体からの就学支援金が出されているうえに学校に対しては生徒一人当たりにつき大阪府から経常費補助金も出ています。私学にもかなりの額の税金が投入されており、これが私学も公教育に含まれる所以です。今後は大阪府民しかいない学校であると単純化すれば、就学支援金60万円と経常費補助金で教育を行うことになります。高校生一人を教育するには年間約100万円弱かかるといわれますので、これはなかなか厳しい状況になります。昨今、30年間のデフレを解消し、諸物価高騰にも対応するために民間企業では大手を中心に大幅な賃上げが進んでいます。長時間労働が一般化し、賃金の上昇も見込めないとすれば、公私にかかわらず、優秀な若者が益々学校から遠のくのではないかと危惧されます。
 今回の大阪府の高校授業料完全無償化案は、大阪府民の生徒・保護者の私学へのハードルを低くすることとなり、選択の自由が広がり好ましいことだと思います。一方、公私間の競争は益々熾烈になると考えられます。「個性創造」をスローガンに掲げる本校は、特色にさらなる磨きをかけてこの荒波を乗り超えて行かねばなりません。

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