好文木(校長ブログ)
2024.10.23
IT先進国スウェーデンの脱デジタル化

 私は以前から電子辞書より紙の辞書を使うべきだと言ってきました。その理由は紙のほうが記憶に残るからです。例えば英単語、電子辞書で引くとパッと現れパッと消えます。一回で覚えきれず何度も引くことがありますが、毎回パッと現れパッと消えます。一方、紙の辞書を使うと、引くのに少々時間がかかります。何度か引くうちに、紙の右ページか左ページか、真ん中か右上かなど、どの位置にその単語があったかで記憶するようになります。私は学生時代、研究社の「新英和中辞典」を使っていましたが、たいていどのページにも一か所か二か所は線が引かれていました。また辞書の小口は手垢で汚れていました。受験生の間では小口の汚れ具合を競うような風潮すらありました。「勉強というのは手間暇かけて苦労して初めて身につく」というのが私が得た教訓です。
 スウェーデンはデジタル教科書の使用で学力が低下したとして紙の教科書に回帰する脱デジタル化に大きく舵を切ったと読売新聞(2024.10.22)は伝えています。日本は学校教育法を改正して2019年からデジタル教科書の使用を可能とし、当面は紙の教科書との併用を進める方針ですが、デジタル教科書は今年度から小中学校の英語で100%、数学は55%の児童生徒が使える状況にあるそうです。果たしてその影響はどう出るでしょうか。
 IT先進国のスウェーデンでは2006年に学習用端末の「一人一台」配備が始まり、教科書を含めたデジタル化が進みましたが、子どもたちの集中力が続かない、考えが深まらない、長文の読み書きができないなどの弊害が出ているそうです。実際タブレットなど電子機器を使いすぎると首も痛くなりますし肩も凝ります。何より目に良い影響は与えません。数学の授業に関するアンケートで「注意散漫になる」と答えた生徒は36.9%に上ったそうです。
 ノーベル生理学・医学賞の選考機関であるカロリンスカ研究所は「印刷された教科書や教師の専門知識を通じた知識の習得に再び重点を置くべきだ」との声明を発表しています。
そして研究者は「学習の記憶は、どのあたりに書かれていたかといった物理的な位置情報にも関連しており、画面上の情報は記憶に残りにくい」と指摘しています。これは私の感想と全く同じです。
 日本は欧米の後追いが常ですが、教育のデジタル化の是非は慎重に見極めるべきだと思います。

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