好文木(校長ブログ)
2019.12.05
PISA読解力低下に思う

 経済協力開発機構(OECD)が世界79か国・地域の15歳約60万人を対象に2018年に行った学習到達度調査(PISA)の結果、日本は読解力で前回15年調査の8位から過去最低の15位に後退しました。数学的応用力も5位から6位へ、科学的応用力も2位から5位へそれぞれ若干後退しました。すべての項目の上位は北京・上海など中国の都市とシンガポール、香港、マカオとなっており中華系の躍進が目覚ましい結果となっています。
 AIが東大に入れるかを研究した国立情報学研究所の新井紀子教授は、AIに負けないためには読解力をつけることだと指摘されていますが、全くその通りだと思います。
 読解力を身に付けるためには先ず、日本語なら漢字、英語なら単語を覚えその正確な意味を理解することが基礎となります。次に文章の構造の理解すなわち文法の理解が必要です。これが完了して初めて論理的に文章を読むことが出来ます。次に大事なことは文章に慣れることです。これは読書をすることに尽きます。評論文を読んで論理的考え方を学び、小説を読んで人間の心情を理解することが出来ます。新聞からは社会の情勢を知ることが出来ます。読解力が付けば、人の心を読む力も備わりコミュニケーション能力も高まります。
 昨今SNS上でのトラブルが頻発していますが、原因は読解力のなさと言ってもよいでしょう。不適切な言葉を使ったり、伝聞推定のあやふやな情報をいかにも事実であるかのように書いたり、またそれを事実として勝手な想像でモノを言ったりということがSNS上で繰り広げられます。事実と異なる宣伝をして人を貶めたり傷つけたりすることにもなりかねません。
 読解力の欠如は子どもたちに限ったことではなく大人にも共通しています。時々報告書を読んで、いわゆる5W1Hが全くできていない文章に出会う時があります。「この人は論理的な考えができない人なんだな」と思います。一方、生徒からもらう手紙の中に論理的で実にわかりやすいと感心するものがあります。読解力は文章力だとも言えます。センター試験に替わる新テストにおける記述式が論議を呼んでいますが、論理的思考の可否を問うには書いたものを読むのが一番です。
 本校の国語教育においてももっと読解力を養う授業を考えねばならないと思います。
漢字は教わるものではなく覚えるものなので、自学自習と小テストで十分です。文法はしっかり教えるべきでしょう。接続詞や助詞を正しく使えない若者が増えているようです。12月5日の読売新聞は、大学のゼミで発表をさせると「そして」「そして」を連発する学生が大勢いるという高千穂大学の小林康一准教授の話を紹介しています。そして何より文章を読む機会と文章を書く機会を多く与えることです。最近よく言われるプレゼンテーション力、本校では「好文白熱教室」がありますが、社会科が始めたものです。国語科においてもスピーチコンテストなど率先してやってほしいと思います。エッセイや小論文指導なども必要でしょう。創意工夫をして進学希望者の期待に応えなければなりません。

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