先日の終業式の校長講話で、教養人の条件について話をしました。無知の知と相手の立場を考えるという二つが教養人の条件だという丹羽宇一郎さん(元伊藤忠商事社長)の説を紹介しました。しかし、世界の状況を鑑みると、理想と現実のギャップがあまりにも大きいと感じざるを得ません。
昨年の年初の講話で申し上げた通り、世界はトランプ大統領に振り回されている状況です。イランとの戦争において、二転三転するトランプ大統領の言動にマーケットも上がったり下がったりを繰り返しています。今回の日米会談は、与党や国内識者のみならず海外からも成功だったとの評価が大勢です。大国の力による現状変更はまさにジャイアンの所業、そのご機嫌を伺いながらうまく立ち回り身の安全を図らざるを得ないというのもリアルポリティクスであることは十分承知していますが、一寸の虫にも五分の魂、もう少し矜持を見せてほしかったなと思います。
戦後アメリカの占領下において総理大臣を務めた吉田茂は、連合国軍最高司令官のマッカーサーにGHQ(General Head Quarters)の意味を教わって、「ああ、そうでしたか。私はてっきりGo Home Quicklyの略かと思っていた」ととぼけたそうです。また、農林省の統計をもとに米軍に食糧援助を陳情したにもかかわらず、餓死者がほとんど出なかったことを、マッカーサーに糾されて「日本の統計がそれほど正確なら、あんな戦争を始めなかったし、始めたとしても負けなかった」と切り返したといわれています。これは、占領されている国のトップが占領している国のトップに阿ることなく堂々と対峙した吉田茂の矜持を示すエピソードとして、作家の阿川弘之さんが『大人の見識』(新潮社)の中で書いているものです。その後、「ワンマン宰相」とか貴族趣味とか言われた吉田茂ですが、敗戦国にとって実に溜飲が下がる小気味よい宰相だったのではなかったかと思います。







